薫紗桜妃さんが感想書いてくれました。

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エレザ。 彼女がとにかくカワイイんデス。



ピース星人という、いかにも平和大好きッコらしい星の宇宙人である彼女は、
髪は長く美しいプラチナ色で、ひとみは透き通るようなガラス細工みたいにキレイ。
ささやく声はまるくてやさしく、癒されちゃう感じ。


そんな彼女に選ばれた地球代表のオトコはというと。

そりゃ、地球とピース星じゃモトより世界が違うんですが、
それ以上にエレザとは見た目ギャップのある青年、昇太。
歯並びも悪くて、なんだかさえない。
この人が !? なんで?

そんな縁のなさそうな二人が、ピース星の超科学兵器≪アストロイド≫を通して出会います。
地球は大ピンチかもしれませんが、昇太にとっては大チャンス。
昇太が戦いに臨むとき、エレザからの励ましの言葉が掛ります。
これはウレシイ。

とはいえ地球を吹っ飛ばしちゃうぐらいですから、敵はもんのすごく強いわけで
これじゃ昇太はいつ死んでもおかしくありません。
それでも大好きなエレザのために、彼はコックピットに乗りこむのです。
人類の敵に、エレザとの恋に、昇太は勝つことができるでしょうか。
どうなるの、ホント。

まずなによりもこのキャスティングがとっても素晴らしく、
岩井はるみさんが演じるエレザの魅力が、シナリオの意図をはっきりさせています。
彼女は男が命をかけたくなるんだ、
だけど遠くて手の届かない存在なんだ、
そう昇太が感じているだろう気持ちが、観ている人にもよくわかるのです。
シナリオの狙いが分かる、つまり、昇太の気持ちを知ることではじめて
≪アストロイド≫の戦いに緊迫感が生まれるのです。

『プラメ』とでも呼べる、プラモデルを動かしてアニメーションを創り出す撮影のおかげで、『ガルダス』の特撮映像はとても迫力がある映像を見られます。
自分で作ったプラモデルがビームライフルを放ち、ビームサーベルで斬りつける姿をイメージして楽しい気分になったことはあると思います。
『プラメ』とはまさにそのままの世界です。
プラモだから‥‥ というよりも、
「プラモがこんなに格好良く動くんだ!」、という感動があります。

映画がリアリティだけを求めるのであれば、CGの正確さはたしかに重要です。
ただ、人間の眼の持つ「分解能」というのはあまりに微細であって、
現代のCGレベルでのテクスチャに描かれたビットマップ程度では、むしろ情報が少ないと云えます。
CGは見飽きた、という人も多いと思いますが、
この情報の物足りなさから来るのかもしれません。

それに比べると、『プラメ』ではもちろんプラモデルという実際には小さなミニチュアであって、素材もスチール樹脂が使われているなど、リアリティではCGに及ばないかもしれません。
ただし、人間の眼の「分解能」がこれを「プラモデルだ」と見破るだけの情報量がそこにはあります。
これはタイクツしません。
「リアル」であることが売りであるCGが、「これはCGだ」と見破られてしまっているのですから、はたしてリアリティってなんなの、と思いもします。

エンターテイメントである限り、私たちはタイクツのない「おもしろいもの」が観たいのであって、「リアル」だけを欲しがっているわけではないのです
『亜空間漂流ガルダス』は、「プラモデルがカッコよく戦う」というエンターテイメントとして、間違いなく面白くて「リアル」な作品なのです。

反対に、プラモデルが戦う映像を観たいと思ったときに、
「プラモ狂四郎」のようなものじゃなくちゃいけない、それが「リアル」だから、と
「リアル」の押し売りをされていると云っても過言ではないと思います。
プラモのモチーフが戦闘メカであるならば、
戦闘メカが活躍する、かっこいいSFストーリーのなかにこそ
プラモデルが躍動する映像を観たいと思うのは当たり前のことなのです。

『ガルダス』はこれに挑んだ作品なのです。
プラモデルを作ったことがある人であれば、≪アストロイド≫の滑らかなアニメーションにきっと驚くことでしょう。
アードマンスタジオのような一流のクレイアニメーション作家でも、コマ取り撮影には膨大な時間が掛り、仕上がった映像は小さなガタつきが残ります。
それを考えれば、『ガルダス』が可動範囲の狭いプラモデルを使って、ここまで動かせてみせているのはそれだけで感動を覚えます。
映像特典に観られるパイロットフィルムを見る限りでは、悪戦苦闘の様子が伺われ、本編クランクインまでのあいだにかなり練習をして上達したこともわかります。


昇太が背負った運命の行く末を見守る観客の感情移入を妨げることなく、
それどころかむしろその運命の過酷さを感じさせるほどに、
≪アストロイド≫の戦闘シーンは迫力のあるものになっています。

それを支えるのが、丁寧に切られた絵コンテと、音響、そして演出と効果です。

イマジナリィラインがしっかり守られていて、見る人が混乱してしまうようなややこしいカメラアングルはありません。
つねに≪アストロイド≫と≪ビッグアイ≫がどこにいるのかが分かり、
カット数が増えても、カットが短くなっても、なにが起こっているのかがすぐに分かります。
スピード感が損なわれることなく、ちゃんと映像が伝えたいことを伝えることができています。見ている人によく気配りされています。
コックピットと≪アストロイド≫の一体感も強く、搭乗型ロボットのおもしろさを存分に発揮しています。

音響はBGMの編集が絶妙で、なおかつあまり主張せずにそのシーンで伝えたいことを最大限後押ししています。
メイキング映像の方でも解説されていますが、効果音は惜しみなく投入されていて、まるで本当に≪アストロイド≫が動いているような錯覚があるぐらいです。
ロボットアニメなどでは、武器の音や機械音などを聞く楽しみがあるのですが、
『ガルダス』でも抜かりはありません。

それからこれは近年の映像作家さんならではだと思うのですが、効果線などマンガ記号を映像に入れることで演出を強化しています。
ロボットアニメが好きな人であれば、スタジオZ5、アニメアールの作画を彷彿させる演出やモーションにグッと来ることでしょう。
≪アストロイド≫の決めポーズのかっこよさは必見です。
これをプラモデルで見るおもしろさはほかの映像にはない醍醐味だと思います。

惜しみなく時間とコスト、労力を使って作られた贅沢な映像でありながら、
見ている人が楽しめることを最優先にした潔い編集にはなによりも拍手を送りたいです。
苦労した部分を見てもらいたいと思うあまり、映像が助長されてタイクツになってしまうものがプロの世界でも当たり前の中で、スピード感を殺さず、もっと見たいと思わせる「気持ちの良い物足りなさ」を余韻として心に残すセンスには脱帽です。
最後に思わぬどんでん返しもあって、まったく退屈せず、本当に楽しんで観ることができました。
このドラマはインディーズでなければ見られないものだと思います。


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